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隣地使用権に関する改正

2022年4月25日お知らせ

土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる(現民法209Ⅰ)

従前の問題点
1.「隣地の使用を請求することができる」の具体的意味が分からない。隣地所有者がどこにいるか不明な場合等で対応ができにくい。
2.障壁・建物の築造・修繕以外の目的で隣地を使用することができるかどうかが分からない。土地の利用・処分を妨げている。

改正前の民法209条は、一定の場合に、「隣地の使用を請求することができる」と定められていました。しかし法律が定める場合以外に隣地を使用できるのかは明らかではなく、また、請求さえすれば自動的に隣地使用権が獲得できるというものではなく、明確に隣地所有者の承諾を得る必要がありました。
したがって、隣家の住人と仲が悪かったり、隣地所有者が所在不明であったりすると、承諾を得ることはできず、裁判で判決をもらわなければなりませんでした。

改正点
改正後は、「隣地を使用できる場合」について、従前の定めに加え、一定の場合が明記され、かつ、具体的な行使方法が定められ、行使方法に従えば、承諾を得られなくても隣地を使用できることになりました。

隣地を使用できる場合(209Ⅰ➀~③)
1.境界またはその付近における障壁又は建物・工作物の築造・収去・修繕
2.境界標の調査・境界に関する測量
3.竹木の切り取り

行使方法
1.使用の目的、日時、場所・方法を隣地所有者及び使用者に通知する→予めの通知が困難な場合には、使用開始後でも可能。
所有者が不明で事前に通知が困難という場合には、実際に使用を行ったあと、所有者が判明した時点で、すぐに通知を行えばよい。
2.日時、場所、方法は、隣地の所有者・隣地を現に使用している者にとって、損害の少ない方法を選ばなければならない

≪注意すべき点≫
Ⅰ.従前と同様、住家(現に人が住む家屋)への立ち入りは、承諾(土地所有者ではなく建物の住人のもの)がなければ立ち入りはできません。
Ⅱ.通知によって隣地使用権を行使できるといっても、隣地所有者が明確に拒否の態度を表している場合にまで、請求権者がその妨害を排除して隣地使用を強行できるわけではありません。
こういった実力行使が必要なケースでは、従来どおり、裁判による判決等を得て、強制執行手続をとる必要があります。

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