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配偶者短期所有権(配偶者居住権との違い)

2022年6月1日お知らせ

配偶者短期居住権は,成立要件を満たしていれば、相続開始時に特別権利を設定することなく生じます。ここが配偶者居住権との大きな相違点です。

配偶者短期居住権とは

夫婦の一方が死亡し,残された配偶者が,被相続人の所有する建物に居住していた場合に,残された配偶者が,直ちに住み慣れた建物を出て行かなければならないとすると,精神的にも肉体的にも大きな負担となります。配偶者短期居住権は,亡くなった方の所有する建物に居住していた配偶者が,引き続き一定期間無償で建物に住み続けることができる権利です。
この権利は相続開始時に、遺言や遺産分割協議によって権利を設定する必要はありません

成立要件
被相続人の戸籍上の配偶者であること(事実婚や内縁の配偶者は含みません)
被相続人の所有していた建物に、相続開始時に居住していたこと

(1) 発生の条件
成立要件を満たしていれば、相続開始時に特別権利を設定することなく生じます。

(2) 期間制限
配偶者短期居住権には、存続期間の制限があります。
配偶者短期居住権の存続期間は、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合には、遺産の分割によりその建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間とされていますが、それ以外の場合(配偶者が相続放棄をした場合など)については、居住建物の取得者からの配偶者短期居住権の消滅の申入れの日から6か月を経過する日までの間とされています(民法 1037①)。

(3) 対象の部分
配偶者短期居住権は、配偶者が無償で使用していた部分についてのみ効力が及び、その成立範囲については、居住用部分に限らず、配偶者が無償で使用していた部分全体に及びます(民法 1037①)。

(4) 相続税の課税
配偶者短期居住権は相続税は課税されません。

 配偶者短期居住権が存続している間,配偶者と居住建物取得者には,どのような法律関係が生じますか?
 配偶者短期居住権が存続している間の配偶者短期居住権者と居住建物の所有者と間の主な法律関係は,次のとおりです。
(1) 居住建物の使用等について
配偶者短期居住権者は,定められた期間の範囲内で建物に住み続けることができますが,これまでと異なる用法で建物を使用することはできないほか(例えば,建物の所有者に無断で賃貸することはできません。),建物の使用に当たっては,建物を借りて住んでいる場合と同様の注意を払う必要があります。

(2) 建物の修繕について
居住建物の修繕が必要な場合には,配偶者がその費用負担で修繕を行うこととされています。建物の所有者は,配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときに自ら修繕をすることができます。

(3) 建物の増改築について
配偶短期居住権者は,建物所有者に無断で建物の増改築をすることはできません。

(4) 建物の固定資産税について
配偶者は,建物の通常の必要費を負担することとなっているので,居住建物やその敷地の固定資産税等を負担することになります。

(5) 登記について
配偶者居住権と異なり,配偶者短期居住権は,登記することはできません。万が一,建物が第三者に譲渡されてしまった場合には,その第三者に対して,配偶者短期居住権を主張することができません。配偶者は,建物を譲渡した者に対して,債務不履行に基づく損害賠償を請求することが考えられます。

 被相続人が遺言をすることなく死亡し,相続人間で遺産分割をすることになりました。配偶者であるわたしは,いつまで居住建物に住み続けることができますか?
 あなたが居住していた建物について,遺産分割の協議が行われる場合には,あなたは遺産分割の協議がまとまるか又は遺産分割の審判がされるまで,建物に住み続けることができます。遺産分割が早期に行われた場合でも,被相続人が亡くなってから6か月間は,建物に住み続けることができます。

 被相続人は,わたしが住んでいる居住建物を第三者に遺贈してしまいました。配偶者であるわたしは,直ちに居住建物から出ていかなければいけないのでしょうか?
 あなたが居住していた建物が,被相続人によって他の相続人や第三者に遺贈された場合であっても,直ちに建物を明け渡す必要はありません。遺贈を受けた人から,「配偶者短期居住権の消滅の申入れ」を受けた日から6か月間は,無償で建物に住み続けることができます。

 被相続人が死亡しましたが,借金があったので相続放棄をしようと考えています。配偶者であるわたしは,いつまで居住建物に住み続けることができますか?
 相続放棄後,直ちに建物を明け渡す必要はありません。建物の所有権を取得した人から,「配偶者短期居住権の消滅の申入れ」を受けた日から6か月間は,無償で建物に住み続けることができます。

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